パティシエや職人で長く厳しい修行・修業は必要なのか

パティシエになりたい人「パティシエって修業が大変なのかなあ…どんなことをどれくらいすればパティシエになれるんだろう…」

「最近、職人に修業は必要ないって人もいるけどそれってほんとなのかなあ…」

 

という疑問に答えます。

 

こんにちは!石川マサヨシです。

僕は今年でパティシエとして活動して27年目です。

その間にホテル、個人店、中規模の菓子製造企業、カフェ、フレンチレストラン、製菓学校講師、等の職場を経験してきました。

現在はフリーランスのパティシエとして活動をしています。

具体的な活動としては、企業様の顧問として商品開発や経営改善・技術指導・等をしたり、

店舗開発のお手伝いやセミナー、レシピ開発、youtube発信、等を行っています。

 

僕個人としては、最初のキャリアのホテルで8年働いたのが修業期間ということになります。

それが終わって26歳からは殆どがチーフ職です。

その経験から修業は必要かどうかを僕の目線から書いていきたいと思います。

 

本記事の内容

◎パティシエや職人で長く厳しい修行・修業は必要なのか

◎外国での修業は必要か

◎具体的に修業とはどんなものか

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目次

パティシエや職人で長く厳しい修行・修業は必要なのか

形はどうであれ修業は必要です

最近、寿司職人さんや天ぷら職人さん等の話題で「修業は必要なのか?」ということがピックアップされたりしてたのですが、

8年修行をし、結果としてこの業界で27年目を迎えた僕から言えることは、

【修業は必要です】

 

なぜ必要なのかと言うところを解説していきます。

 

なぜ修業は必要なのか

なぜ修業が必要なのか。

それは仕事として、その職業特有のスキルが必要だからです。

 

僕はキャリアを始める前に一年間、専門学校に通いました。

高校卒業してから専門学校に通い一年通えば、それなりに作れるようになるだろうと考えていました。

しかし結果として、就職時の実力はお菓子の作り方を少し知っているくらいでした。

 

学校との明らかな違いは【量】です。

専門学校の実習で一日かけてケーキを作っても数台です。

現場では数十・数百という数が当たり前で、それがただの一部でしかありません。

その量をこなしながら、すべての製品を同じ精度で毎日作ることは、専門学校を卒業しただけでは身には付きません。

 

例えば、

ケーキの本を自分で見てケーキを作ってみたり、

お菓子教室に習いに行って習ったものを自分のお家で作ってみたり、した時に

「あれ?なんか違う…」と思った方は多いのではと思います。

 

それは何故かというと、上手に作るには前提条件があるからです。

 

材料・作業・器具についての知識

砂糖、卵、小麦粉、乳製品。

これがケーキの代表的な材料ですが、

 

それぞれの材料について、

  • どういう条件でどうしたらこうなる
  • この作業をどこまでしてしまうと失敗する

 

ということを経験として知り、理解していることが一番の前提条件です。

 

作業にしてもそうです。調理中に行う作業にはすべて目的があります。

何故この作業をするのか。というところを自分の経験をもって理解していないといつも同じ精度に作ることが出来ません。

そのためには当然、材料の物性についての知識が必要になります。

例えば、

卵の白身は58℃から固まり始めて80℃以上で完全に固まる

黄身は65℃から固まり始めて75℃以上で完全に固まる

とかです。

その知識を持った上でカスタードクリームやアングレーズソースを炊くと失敗する確率は確実に減ります。

 

器具に関しても、こういう目的をもってこの作業をするから、器具はこれが適切だ。

というように、

材料・作業・器具、どれか一つだけの知識が有っても全く成り立ちません。

それぞれのことがリンクしてはじめて、一つのノウハウとなります。

 

 

インプットとアウトプット

修業時代は学ぶ期間です。この期間はインプットする時期。

シェフパティシエ等の役職についたりリーダーになると、そこからはアウトプットが主になってきます。

 

アウトプットするには自分の中で理解・整理できたものがないと出来ません。

そのアウトプット出来る引き出しは、その方がどれだけ学んだかによります。

期間は他の方より短くても、色んなことに気づき理解できていれば、アウトプットは出来ると思います。

ただ長く修業すればいい、ということではありません。

 

個人で修業は出来ないのか

では仮に、

お店と同じ量を毎日自分一人で作るとします。(現実的では無いですが…)

推測ですが、

お店で同じ期間修業するのとでは、同じ実力になるためにもっと時間がかかると思われます。

 

それは、

見本がないからです。

 

僕自身、修業中に先輩や師匠のアシスタントについて補佐をしている時に、

「あーなるほど、こうすれば失敗しないのか」

と思ったことが星の数ほどあります。

 

多分、一人で作り続けたらそれはそれで色々と理解出来、上達もしてくると思われます。

ですが、モノによってはずっと理解出来ないこともあるのでは、と感じます。

自分の知識だけでは限界があります。

その自分の知らないことを学べるのが修行です。

 

修業は、

自分のスキルを上げるためにとても効率的に学ぶ、ということです

 

 

外国での修業は必要か

どちらでもいい ただし文化や風土には触れたほうが良い

僕は外国では修業ということをしていません。

ただ、ヨーロッパを放浪していた時期はあります。

 

仕事の質に関して、日本はレベルは高い方です。

 

クープ・ド・モンド等の世界大会などでは優勝候補の常連ですし、

普段の仕事をフランスなどと比べても、日本のほうがキメ細かくしていることもたくさんあります。

その違いを自分で経験出来るのならした方が良いと思いますが、

日本だけで修業した諸先輩方もとても素晴らしい職人の方がたくさんおられます。

学ぼうと思えば日本でも十分学べます。

 

ですが、

文化や気候風土は決定的に違います。

 

土が違えば作物の味が変わるのは当たり前のことですが、

僕はヨーロッパで「フルーツってこんなに美味しかったんだ」と知れました。

普段の仕事で冷凍でしか使っていなかったグロゼイユがこんなに美味しいんだ!ってびっくりしたり。

オーストリア・ドイツ・フランスの各地を周っていて、行く土地で市場に行ってはフルーツを買って食べまくってました。

 

また、

段々と控えめになってきているとはいえ、ヨーロッパのお菓子は甘味がキツかったりしますが、

それも料理に砂糖を使わないから、デザートに甘味を求めたくなる。ということも自分で経験したのは、

その土地の菓子を作るものとしては大きいと感じます。

 

その時はパティシエでいる事自体を悩んでいる時期でしたが、

一人で放浪している間に色んな感銘を受けたこともあって、最終的にはパティシエとして生きていくと決断できました。

 

働かなくとも、一年くらい現地を放浪するのは是非オススメします。

専門学校の元教え子にも勧めて、実際に行った子もいますが、

行って良かったと言っています。

 

実際の修業中 仕事内容・給与は

仕事内容

新人で入ってすぐには、

例えば、生地やムース等、主役のものに触ることは出来ません。

前々項で述べた通り、基礎のノウハウ(材料・作業・器具)がないからです。

その基礎のノウハウを順番に学んで行ってもらうために、簡単な仕事から与えて積み上げて行きます。

例えば、フルーツのカット、材料の計量、色んなものの準備片付け洗い物、など

その一つ一つの仕事が問題なく出来るようになったら、次に少しレベルの高い仕事を与えます。

 

一つ一つの仕事に意味はあります。

 

「早くお菓子を作りたいのに!なんでこんなことしなきゃいけないの!」

と思うかも知れませんが、

自分の実力が上がれば仕事のレベルもアップしていきますので、目の前の与えられた仕事に真剣に真摯に向かい合っていって下さい。

 

修業中の給与

修業中の給与、

新人でだいたいのお店で15~20万くらいではないでしょうか。

手取りは色々引かれて12~18万とかがリアルな数字かと思います。

 

そんなに色々出来るほど満足にはもらえません。

一人暮らしとかだと特に倹約しないと生活もままなりません。

 

20年以上前ですが、僕の友達は住み込みで働いていて、

4畳半に2段ベット2つの部屋で4人で生活しながら、月給4万と聞かされたことがあります。

今では絶対に無理。その時代でもさすがに酷いと思ったのですが、

その友達はそれをバネにしてクープ・ド・モンドで部門賞を獲るくらいになったので、

今となってはそれも意味のあることだったんだろうか。と考えたりします。

 

まとめ

◎修業は効率よく学べる

◎外国の文化や風土には触れましょう

◎修業中の簡単な仕事にも意味はある

早く一人前のパティシエになりたいと思うのは当然ですし、主役級の仕事をしたいと思うのも当然です。

ですが、先ずはそれを受け止められる自分の器を作りましょう。

すっ飛ばしていろいろやっても、そのうち行き詰まります。

一つ一つ地道にすることが一番重要です。

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